生活習慣を顧みる

夜更かしの弊害

 説明を集中して聞くことができない、問題を解く時に頭が回っていない、といった様子の生徒が時々います。注意しても何度か続くような場合、より詳しく事情を聞くと、原因の多くは睡眠不足です。夜遅くまで携帯で友達と連絡を取り合ったり、動画を見たりして就寝時間が遅くなっているようです。
 睡眠不足になると、集中力や思考能力、学習能力が低下するだけでなく、肥満や免疫力低下、ストレスの原因になることが指摘されています。もちろんこんな説明をされなくても、睡眠不足のメリットなど一つもないことは誰もが理解していると思いますが、勉強の効果に及ぼす悪影響の大きさは意外と過小評価されているのではないかと思うのです。慢性的な睡眠不足の場合、学んだ内容が全てリセットされてしまうほどの悪影響があります。つまり、学校や塾で勉強している時間、労力、費用などが全て無駄になってしまうのです。

朝食の重要性

 きちんと朝食をとることも勉強には重要な点です。文部科学省の「全国学力・学習状況調査」では、朝食を食べる習慣のある生徒は、そうでない生徒より高い成績をおさめることが実証されています。
 農林水産省による「食育白書 (2019年6月発表) 」によると、朝食を食べない子どもは小学6年生で5.5%、中学3年生で8.0%だそうで、この数値は近年増加傾向にあるとのことです。朝食を食べない理由は「食べる時間がない」「食欲がない」の順に多いのですが、「毎日、同じくらいの時刻に寝ていないという小中学生ほど、朝食欠食率が高い傾向にある」という分析もあります。
 朝食は食べないがその他はとても規則正しい生活を送っている、というのは考えにくいでしょう。むしろその他の生活リズムも全体的に乱れていると推測する方が自然です。そのせいでテストの成績が下がるということは、規則正しい生活をしているかどうかの違いが、勉強の成果にもつながっているということになるでしょう。

提出物を軽視する危険性

 中学校では各科目で問題集などを解いて提出するという課題があります。その内容や頻度は担当する先生によって様々ですが、このような提出物は成績をつける上で非常に重視されることが多く、提出期限を守らない、課題の取り組み方が雑、などの場合は当然評価が低くなります。せっかく中間や期末などの定期試験で良い点を取っても、提出物を疎かにしていてはそれらも水の泡になってしまうのです。
 いつどんな提出物があるのか、塾では把握できません。綿密な試験対策を行い、補習を繰り返してようやく定期試験の点数が上がったと思ったら、提出物を出していないせいで内申点が上がらなかった・・・こういう残念な経験を過去に何度もしました。
 また、こういった提出物がきちんとできないと、単に内申点や成績が下がるだけでなく、「約束を守らなくても平気な人間」になってしまう恐さがあります。「数学の問題が解けない」というのと「提出物が期限に間に合わない」というのを同じレベルで捉えているとしたら、それは大間違いです。前者は学力の問題ですが、後者は人間性の問題だからです。

生活態度の差が成績に及ぼす影響

 成績を上げるために勉強するのは当然ですが、その勉強の効果がきちんと現れるかどうかは、「誘惑に流されない」、「提出物の期限を守る」、「規則正しい生活を送る」といった基本的な態度の差が大きく影響すると思われます。言い方を変えれば、これらの態度や姿勢がなければ、いくら勉強しても台無しになってしまうということです。
 さらに恐ろしいのは、これが単に学生時代の勉強に限らないということです。社会人になってからの生活にも、そっくりそのまま当てはまるのです。
 「誘惑に流されない」というのは、「嫌なことでも逃げずに取り組む」ということです。試験前であれば、携帯で遊びたい気持ちをグッと我慢して勉強をしなければなりません。それは大人も同じです。仕事するのが面倒だとか、バイトに行きたくないなどと思っても、実際にさぼってしまったら次から職を失ってしまいます。また、提出物の期限を守ることができない人は、他の約束事も守れないのだろうと判断されます。そういうだらしない人間は次第に信頼を失っていくのです。規則正しい生活ができず、睡眠不足でミスを連発したり作業が滞ったりと、仕事に支障をきたすような人は、やがて周囲から必要とされなくなるでしょう。
 勉強して成績を上げるために必要な生活態度というのは、このように社会人になってからも重要なのです。世の中に出たら使わないように見える勉強でも頑張ってやらないといけない理由の一つはここにあります。自分の普段の生活がきちんとしているか、時々振り返ってみてはいかがでしょうか。